資金繰りに関する支援制度
1 支援制度の概要
新型コロナウィルスの感染拡大により、大幅に売上げが減少して、資金的に中小企業・個人事業主の方におかれまして、資金繰りの危機に直面している方が多くいらっしゃいます。また、今後、5月6日以降も緊急事態宣言が延長される可能性が高くなっております。
政府は、資金繰りに窮する経営者を対象にした様々な支援制度を設け、金融庁からは民間の金融機関に対して、政府からの融資に時間がかかることからつなぎ融資を積極的に行うよう要請が出されました。
そこで、以下で、政府が現在、設けている資金繰りに関連する主な支援制度を整理いたします。
詳しくは、https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf
また、下記各制度に関するフローチャートは https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/shikinguri_list.pdf
(1) 民間金融機関による信用保証付融資
ア セーフティーネット保証4号・5号
信用保証協会が、経営の安定に支障が生じている中小企業者を、一般保証とは別枠(最大2.8億円)の保証の対象とする資金繰り支援制度。
イ 危機関連保証
信用保証協会が、全国・全業種(ただし、一部対象外業種あり)の事業者を対象に、一般保証及び上記アの保証とは別枠(最大2.8億円)の保証枠を設ける制度。
ウ 信用保証付融資における保証料・利子減免
上記ア及びイの適用条件と連動した売上高等の減少を満たせば、無担保・融資上限3000万円で、保証料の補助及び利子補給を実施する制度。
(2) 政府系金融機関による融資
ア セーフティーネット貸付(要件緩和)
新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた特例措置として、これまでのセーフティーネット貸付の要件が令和2年2月14日に緩和され、「売上高の5%以上減少」という要件を満たさなくても、今後の影響が見込まれる事業者も含めて融資対象としました。(条件、金利は以下の整理表のとおり。以下同様)。
イ 新型コロナウイルス感染症特別貸付
日本政策金融公庫が、信用力や担保に依らずに一律金利で、融資後の3年間まで0.9%の金利引き下げて、融資を実施する制度。なお、融資限度額が中小事業3億円/国民事業が6000万円、利下げ限度額が中小事業1億円/国民事業が3000万円にそれぞれ設定されています。
ウ 商工中金による危機対応融資
商工組合中央金庫が、新型コロナウイルス感染症による影響を受け、業況が悪化した事業者に対し、危機対応融資による資金繰り支援制度。なお、融資限度額が3億円、利下げ限度額が1億円にそれぞれ設定されています。
エ マル経融資の金利引下げ
小規模事業者経営改善資金融資(通称:マル経、日本政策金融公庫等が、商工会議所等の経営指導員による経営指導を受けた小規模事業者に対して、無担保・無保証人で融資を行う制度)制度につき、新型コロナウイルス感染症の影響により売上が減少した小規模事業者の資金繰りを支援するため、別枠1000万円の範囲で、通常の貸付金利から引き下げます。
オ 特別利子補給制度
上記イからエの借り入れを行った中小企業者等のうち、売上高が急減した事業者等に対して、利子補給を実施する制度。この制度を利用することにより、上記イからエの借入れを受けた後に、返済した利子の補給を受けることで、実質的に無利子にすることができます。
※1.小規模事業者は、①製造業、建設業、運輸業、その他の業種は従業員20名以下、②卸売業、小売業、サービス業は従業員5名以下に限られます。
※2.日本政策金融公庫等の既往債務も、特別利子補給制度の対象とすることができます。
その他に、兵庫県では、県下の中小企業等を対象に支援制度を設けておりますので、ご確認ください。
詳しくは https://web.pref.hyogo.lg.jp/sr08/ie05_000000031.html
2 申請手続き・相談について
(1) 民間金融機関による信用保証付融資
ア セーフティーネット保証4号・5号/危機関連保証
お取引のある金融機関、最寄りの信用保証協会または認定手続きを行う(事業者の所在地の)市区町村にご連絡ください。
その際、適用条件の充足(前年同月比5%~20%以上減少)の説明を求められると思いますので、売上高の変化がわかる資料(前年度の決算書、直近の売上台帳等)をご準備ください。
イ 信用保証付き融資における保証料・利子減免
具体的な申請方法等、具体的な手続きについては、詳細が固まり次第、中小企業庁のホームページ等で公表される予定です。
なお、現時点(令和2年5月3日)における問い合わせ先は、中小企業金融・給付金相談窓口(03-3501-1544)になります。
(2) 政府系金融機関による融資
ア セーフティーネット貸付
まずは、日本政策金融公庫(電話番号につき、(1) 平日は0120-154-505、(2) 土日・祝日は、0120-112-476(国民生活事業)または0120-327790(中小企業事業))までお問合せください。
その際、少なくとも新型コロナウイルス感染症が事業に及ぼす影響に関する説明を求められることがあると思いますので、売上高の変化がわかる資料をご準備の上、ご相談ください。
イ 新型コロナウイルス感染症特別貸付
お取引のあるまたは最寄りの日本政策金融公庫にご連絡ください(その他にご不明な点がある場合は、(1) 平日は0120-154-505、(2) 土日・祝日は、0120-112-476(国民生活事業)または0120-327790(中小企業事業))までお問合せください。)。
その際、適用条件の充足(売上高の5%以上の減少等)の説明を求められると思いますので、売上高の変化がわかる資料をご準備ください。
ウ 商工中金による危機対応融資
お取引のあるまたは最寄りの商工組合中央金庫にご連絡ください(その他にご不明な点がある場合は、商工組合中央金庫相談窓口(0120-542-711)にお問い合わせください。)。
その際、事業内容やこれまでの経営実績、融資条件を満たすことを説明する必要がありますので、過去3年間の決算書や売上高の減額を示す資料をご準備ください。
エ マル経融資の金利引下げ
融資を行っている日本政策金融公庫(お取引のある本支店)にご連絡ください。
その他に、経営指導を受けた商工会議所・商工会・都道府県商工会連合会へのお問合せでも構いません。 その際、適用条件の充足(売上高の5%以上の減少)の説明を求められると思いますので、売上高の変化がわかる資料(前年度の決算書、直近の売上台帳等)をご準備ください。
オ 特別利子補給制度
具体的な申請方法等、具体的な手続きについては、詳細が固まり次第、中小企業庁のホームページ等で公表される予定です。
なお、現時点(令和2年5月3日)における問い合わせ先は、中小企業金融・給付金相談窓口(03-3501-1544)になります。
3 事業計画/返済計画の再構築
以上の制度を利用するに当たり、経営者の方において、一定の売上高の減少を示す必要がある一方で、金融機関及び保証協会等の審査を受ける必要があります。そして、正常な社会情勢における融資の場合以上に、事業計画の内容等を含めた今後の返済の可能性が厳しく見極められる可能性が高いと考えられます。
経営者の方々におかれましては、合理的な事業計画の策定が求められることはもちろんのこと、今後の社会情勢の動向を見据えながら、①支出の面において、最大限、不必要な経費を削減させることを示すとともに、②収入の面において、大幅に減少した売上げを回復させるための合理的・説得的な説明が求められますので、今一度、決算書等の事業に関連する資料の精査が必要になります。
なお、金融機関との間で融資・返済計画に関する協議を行う際、47都道府県に設置されている中小企業再生支援協議会が、各経営者の代わりに、金融機関に対して、元金返済の猶予の要請を行ったり、資金繰り計画/事業再生計画の策定への助言・支援を行いますので、同協議会のご利用も有用かと思います。
4 最後に
令和2年5月1日以降、民間金融機関における実質無利子・無担保融資の制度が利用できるようになってきております。
経営者の皆様におかれましては、仮に、資料が完全に揃っていなかったり、今後の返済計画が整理できていない状況であったとしても、ひとまず、お取引のあるまたはお近くの民間金融機関にご相談ください。このような状況下において、民間金融機関も、政府からの要請も相俟って、柔軟に対応する可能性があります。
また、些細なことでも構いませんので、弊所にご連絡いただければ、少しでもお力添えできることがあると思いますので、遠慮なくご相談ください。
(弁護士 野村洋平)